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おだっくいLOVE
第六章 たびだち
【八】物語の始まり
あの日以来、淳と望月の仲は確実に固まったような気がする。
べたべたしているわけではないんだけど、
なんていうか、信頼感、絆、といったようなものがオーラとなって二人から伝わってくるんだ。
何気ない視線が、さりげないやりとりが、そんなことを感じさせるんだな。
僕と絵里ちゃんはと言えば、相変わらずなんだ。
周りからは僕が尻にしかれてる、って感じに見えるらしい。
まあ、半分は本当かな。
でも、二人になったとき時折見せる甘えんぼの絵里ちゃんをみんなは知らないのさ。
別にいいけどね、僕だけが知ってれば。
そう言えばあの日、淳が家に帰ったら、部屋で幸利の奴がグースカ寝てたらしい。
淳が起こしたら、「おかえり。どうなったっけだね。」とか聞いたかと思うとすぐにまた寝ちゃったらしいんだ。
で、結局そのまま淳の家に泊まったんだってさ。朝早く起きていったん家に帰ってから学校に来たって言ってた。
幸利の成績は最近、学年で三十番前後に落ち着いてる。
南高は間違いないだろうって、先生にも言われたらしいよ。陸上一本槍だからね、あの男は。
みんなに伝えたい話はたくさんあるけど、詳しい話はこの辺で終りにしておくよ。
楽しいことも、あんまりたくさんだと、みんな、飽きちゃうでしょ?もったいないもんね。
もちろん、淳は相変わらずのフィクサーぶりを発揮して、自分は目立たずにクラスを盛り上げてるし、
僕は僕で、絵里ちゃんに支えられながらもクラスの中心でみんなを引っ張ってる。
望月も望月で、一組をものすごいパワーでまとめ上げてる。
そうそう、あの日、僕らを手伝ってくれたうちのクラスの堂本と一組の上田だけど、
案の定、いい感じになってる。そうだと思ってたって?まあね、誰でもそう思うよね。
今年の文化祭は、例年にない盛り上がりを見せたんだ。
特に三年生が頑張って、劇にしろ展示発表にしろ、合唱もバンド演奏も、ものすごいハイレベルなものとなり、
先生方をはじめ、保護者の方々も驚いたらしい。
僕ら二年もかなり頑張ったんだけど、火のついた三年生にはかなわなかった感じだ。
去年の一の六の劇が起爆剤だったねと、加藤先生が言ってた。
部活でも、小学校の訪問演奏を大好評のうちに終え、先日は地域の養老施設に慰問演奏に行ったんだ。
ムーンライトセレナーデで絵里ちゃんの吹いたソロが大好評だったよ。
今は三月に市民会館で開くことが決まった定期演奏会に向けて、頑張って練習しているところさ。
そうそう、ホルンの望月先輩が、ユーフォの海野先輩にちゃんと告白して、
正式にお付き合いを始めたらしいよ。『正式に』、って言うのは望月先輩の言い方だけどね。
もちろん、まだまだたくさんの冒険が僕らを待っていると思うよ。
勉強だってするし、喧嘩もする。
時折落ち込んだり、立ち直ったり、忙しい日々を過ごす事になると思うんだ。
そんな時に、そばに絵里ちゃんがいてくれる。
で、絵里ちゃんのそんな時、僕がそばにいられる。
そのことが僕に大きな勇気をくれるんだ。
この先、どんなことがあっても頑張れる勇気をね。
そう。物語はまだ始まったばかりなのさ。
ねえ、そうだろ、絵里ちゃん?
(おだっくいLove おわり。 2008/03/24 茶畑蜜柑乃介)