Many Ways of Our Lives

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おだっくいLOVE

第五章 成長

【四】地区大会本番!

いよいよコンクール本番の日がやってきた。

朝五時半。
夕べは良く眠れたなあ。
目が覚めて、意外に落ち着いた気分でいる自分がいた。
どうしてかな?と思ったとき、小清水先生の笑顔と「自信を持っていいぞ。」と言う言葉が頭に浮かんだ。
そう、僕らはやるだけの事をやってきた。
あとはそれをそのまま出すだけだ。
杉山先輩を始めとした三年の先輩達の顔が浮かんだ。
淳やスズケン、ブー太や篠宮の顔が、そして絵理ちゃんの顔が浮かんだ。

大丈夫。僕らはやれる。

  窓を開けて青空を見上げる。さわやかな朝の風がほほをなぜた。
僕は小さくガッツポーズをして、「よしっ」とつぶやいた。

朝食はおなじみのメニュー。
アジの開きに玉子焼き、ご飯に味噌汁。たらこの切子とたくあん、わさび漬け。
「しっかりな。まあ、肩の力を抜いて、いつも通りにやってこいや。自然体だぞ。」
父に励まされる。
「早めに行っていい席取んなきゃね!」
双子が無邪気にはしゃぐ。
おいおい、コンサートじゃないんだから、などと軽く突っ込んでおいた。
「じゃあ、行ってきます。」
外に出ると、すでにかなり高く上がっている太陽が真夏の日差しを僕に注いだ。
あっちー。水筒には冷たい麦茶がたっぷり詰まっている。

一旦学校に集合して、音出しをした。
早めの昼食をとり、貸し切りバスで出発。
バスで四十分ほどゆられる。
少しずつみんなの気持ちが高まってくるのがわかった。
駿府会館に到着。バスを降りた。
バス駐車場はさほど混んでいなくて、二台分空けたそのむこうにもちょうど今バスが到着した。
おっ。島田西中のバスだ!何か因縁めいたものを感じた。
去年のあの島田西中生のセリフは忘れない、今年は見てろよ!なんて大人気ない事を考えていると、
島田西中の生徒が一人こっちに歩いてくる。僕らがちょっとざわつくと、杉山部長がみんなを制した。
「ざわつくな。島田西中の部長だ。」
みんながシーンとなる。
杉山部長が笑顔で先に声をかけた。
「よう、横田!調子はどうだ?」
え?部長、知り合いなんですか?島田西中の部長さん。
「おう、ぼちぼちってとこだな。お前のとこ、だいぶいいらしいじゃないか。」
杉山部長はさらに笑って、
「まーな。今年の俺達は一味違うぜ。」
横田と呼ばれた島田西中の部長も笑い返した。
「相変わらずだな、その物言い。それはそうと、今日はちょっとお前らに謝りに来たんだ。」
「謝りに?一体何のことだ?」
「いや、古いことなんだがな。去年のコンクール、県大会のときに、うちの馬鹿どもが調子に乗った事をお前んとこの一年・・・
だから今の二年か・・・の目の前で言ったらしくてな。小清水先生はどこにいらっしゃる?」
「ちょっと待ってろ。小清水先生!島田西中の部長が来てます。ちょっといいですか?」
「おう、どうした?」
運転手の方と帰りの打ち合わせ確認をしていた先生がバスから出てきた。
横田部長が頭を下げて挨拶する。
「こんにちは。島田西中の横田です。お忙しいところすみませんが、先生のところの部員達に
是非伝えたいことがあってきました。よろしいでしょうか。」
 先生は何も聞かずににっこり笑って頷いた。
「ああ、ええよ。杉山、みんなを呼べ。」
「はい。おーい、おまえら、注目!ちょっとそのまま静かに話を聞け!よし、横田、いいぞ。」
ぼくらは横田さんを見つめた。横田さんが話し始めた。
「去年うちの馬鹿どもが調子に乗って言った事を聞いちまった人っちに謝りたくて来た。
俺らの指導が行き届かなくて気分悪い思いをあんたっちにさせちまったな。本当に申し訳なかった。すまん。」
大きな声でそこまで言うと、横田さんは深々と頭を下げた。顔を上げ、話を続けた。
「今年はきっとそんなことはないと信じてる。そん時のやつらは散々絞っといたし、新一年もよーく指導しといたから。
どうか、島田西中を嫌いにならないでくれ。これからもがんばるんてな。」
僕らは思わず「ハイっ」と返事していた。さすが県代表の常連校だ。
「うん、いい返事してるな。じゃあ杉山、忙しい時にわりーっけな。じゃあ、今日はお互いいい演奏をしようぜ。」
「おう、また県大会で会おう。」
「気が早いな。ま、そのくらいじゃなきゃ、ライバルとしては物足りないか。」
「天下の島田西中にライバルとか言われるとこそばゆいぜ。じゃあ、お互い頑張ろう!」
部長同士でがっちり握手をしてわかれる。
「小清水先生、ありがとうございました!」
そう言って颯爽と戻ってゆく横田部長のうしろ姿がかっこよかった。
ちょっと杉山先輩に雰囲気が似てるかな。
「よーし、じゃあみんな、時間が迫ってる。予定通りに行動だ!」
みんながゾロゾロと歩き出す。横田さんの話を聞いて安心した。
一緒に県大会に行ってまた刺激を貰いたいな、と本気で思った。

すでに保護者とOBによって運搬されていた楽器を取りに行き、集合場所に運ぶ。
運搬経路の違うパーカッションとはここでお別れだ。
淳と目が合った。淳がにやりと笑って頷いた。僕も頷く。

集合場所で楽器をケースから取り出し、組み立てる。
ケースを整理してプラカードを持った係りのお姉さんの前に楽器を持って整列する。
「はい、時間です。移動します!」元気のいい声に思わず皆返事をする。
「ハイッ」
係りのお姉さん(高校生だと思う)が笑顔になって、やさしく僕らを導いてくれた。

小ホールで十五分間の音出し。丁寧にロングトーンとハーモニー練習をする。
チューニングルームに移動。まずはパートごとに個々にチューニング。
その後全体で音を出して細かいチューニングの狂いを先生が修正する。
自由曲の頭をそろえてみる。
先生の指揮棒に集中して、それっ。
「パーーーン」
スズケン、調子が良さそうだ。先生も満足そうに頷く。
気になるポイントを二三確認して、チューニングルームの持ち時間が終了した。
本番前に何かを伝えられるのはここだけなので、最後に先生が注意を僕らに伝える。
「いいか、ステージで音を出した瞬間、自分の音しか聞こえないような錯覚に陥ることがある。
いつもより席と席の間が広いので、一瞬そう感じるんだ。でも、焦らないで僕の棒を見なさい
そしていつも通り吹きなさい。すぐにみんなの音が聞こえてくるから。」
いよいよ舞台袖へ移動だ。

静かに静かに移動する僕らだった。
傍目には緊張で声が出ないように見えたかもしれない。
けどきっと、みんなの心は凪いでいたんだと思う。
程よい緊張感に包まれていたんだ。

舞台上手袖に整列する。
先生は一度舞台下手のパーカッションのところに行ってから戻ってきた。
そしてメンバー一人一人と握手をしてくれた。
後で聞いたら淳たちパーカッションのメンバーともしっかり握手をしたそうだ。

舞台上では僕らと同様下馬評の高い袖師中学が演奏をしていた。
自由曲はリードのインペラトリクス、さすがにいい演奏をしている。
それでもぼくらは何の心配もしていなかった。

ふと部長に目が行った。偶然部長もこっちを向いたところだったらしく目が合った。
杉山先輩は自信にあふれる笑顔をくれた。僕の気持ちがまたひとつ楽になる。

袖師中の演奏が終了し、僕らのパーカッションの設置と座席の用意が進んでいる。
用意が出来て、ゴーサインが出た。
列ごとに入場を始める。今年はちょっと格好をつけて、列ごとに揃ったら座るように練習しておいたのだ。
全員が着席し、先生が指揮台の横に立つ。ライトが明るくなる。
ああ、客席なんて見えやしない。
「プログラム八番。清水市立富士見ヶ丘中学校。課題曲、一。自由曲、ショスタコービッチ作曲、ハンスバーガー編曲、祝典序曲。
指揮、小清水祐二。」
アナウンスが流れ、先生が客席を向いて深く礼をした。拍手が鳴り、収まった。
先生が振り向き、指揮台に上がる。バンド全体を一渡り眺める。と、指揮棒が上がった。

深いブレスの音に続いて、課題曲が始まった。
滞りなく進んでいく。と、いつのまにか自分の音がやけに響いて聞こえる。
いつもより広い椅子と椅子の間隔。あれ?みんなの音が聞こえない!
そう思った瞬間、先生と目が合った。
先生が深く頷いたような気がして、次の瞬間、いつものバンドの音が耳に戻ってきた。
そうか!これが先生が言ってた感覚だ!
でもそんな事を感じたのは一瞬で、課題曲も中盤になる頃には十分落ち着いていた。
後から聞いたら、スズケンも同じような感覚に襲われたらしい。ふう。

いよいよ自由曲だ。絶対にはずせない冒頭のファンファーレ。
スズケンは見事に当てた!
その瞬間、客席は僕らの世界に引きずり込まれていたらしい。
大山先輩やブー太、そしてそこにストリングベースが加わってすばらしい安定感のあるベースに支えられたバランスの良いアンサンブル。
山本先輩を始めとするソロパートの華麗な演奏。流れるようなプレストには快感さえ感じた。
ラストのテュッティ(全体演奏)にはまた鳥肌が立った。
エンディングまで音の勢いは衰えることなく、最後の最後のユニゾンがホールに響き渡る。

一瞬の静寂。

次の瞬間、ものすごい拍手が僕らを迎えてくれた。
全員起立して、先生が深々とお辞儀をする。拍手が更に大きくなる。
拍手が収まった後も、会場はざわざわし続けていた。

下手にハケた後も僕らの興奮は収まらなかった。
女子の何人かは感極まってもう泣いている。
海野先輩の目にも涙があふれていた。絵里ちゃんも涙を流している。
僕も泣きそうだった。
この瞬間、僕らは満足していた。
結果がどうあろうと、今の僕らに出来る最高の演奏が出来たんだ。

そこからはフィルムの早回しのような感じで楽器を片付け、大きな楽器をトラックに積み込み、
なんとか僕ら出場者が会場に戻れたのは結果発表前の休憩時間だった。
ホール前のロビーは人でごった返していた。
あちこちでプログラムを見ながらああでもないこうでもないと言い合う中学生がいた。
「亮介!こっちこっち!」
いきなり呼ばれて振り向くと母が双子と一緒にジュースを飲んでいた。
「素晴らしかったわよ!もう言うことなし!淳君もかっこよかったけど、あのトランペットの子、
鈴木君だっけ?かっこよかったあ!」
おいおい、息子は?
「あんたもまあまあだったわね。でもあれね、演奏を聴いた中ではあんたたちがずば抜けていた気がするわ。
あんたたちちの前の袖師中を聞いた時は富士見中は大丈夫かしらとか思ったけど。身内びいきかもしれないけど、
あんた達の演奏を聴いたら鳥肌が立ったわよ。あ、淳くーん!お疲れ様!」
「こんにちは。応援ありがとうございます。どうでした?ぼくたち。」
「素晴らしかったわよお!」以下同文。
「じゃあ、僕らまとまって座るから、先に行くぜ。」
と母に行って、淳を促す。淳が母にあいさつ。
「では失礼します。ありがとうございました。」
コラコラ、そこでそんな笑顔で母さんを見るな。また後で騒ぐから。

一年の連中がまつわりついてきて口々に僕らを褒め称えてくれた。
悪い気分じゃないね。
でもいいか、来年は君らの番だからな!鍛えてやるから覚悟しとけ!

ほぼメンバー全員がまとまって着席できた。
パートごとにまとまるよういわれてたんだけど、なぜかトロンボーンの横がクラリネットで、絵里ちゃんと隣同士になっちゃった。
絵里ちゃんが教えてくれた。
「山本先輩と美里先輩がアレンジしてくれたんだって。うふっ。」
うふっ、て絵里ちゃん、平常心だねえ。これから運命の結果発表だってのに、明るいねえ。
「だって、やることはやったんだし、今更慌てても結果は出てるんだしね。」
そりゃそうだけどさ。すると絵里ちゃんの目線が僕をスルーした。
「あ、康介ちゃんに菜摘ちゃんだ!やっほー!」
双子たちが手を振ってる。苦笑いするしかないね。

おおっと!ステージのカーテンが開いた!
ひな壇に、各校の代表者が並んでいる。
右から八番目に杉山先輩と海野先輩が並んでいた。
この二人、やっぱり目立つなあ。サイコーにかっこいいや。

この中部地区参加十校のうち、県大会に出られるのは三校。
しかもその中には去年の県大会金賞校島田西中もいる。
「それではこれより、成績発表及び表彰式を行います。発表に先立ちまして、大会実行委員長、横山昭夫より挨拶がございます。」
出た。発表に先立つこの挨拶が長いんだよね。どこの生徒もそれがわかっててため息をついている。
ところが、今年の横山さん、そんな僕らの気持ちを知ってか知らずか、一通り各方面に感謝の意を表した後、
「皆さんも結果が気になるでしょう。挨拶はこれくらいにして、発表に移りましょう。」
と来たものだから、場内大拍手。

さて、いよいよ発表だ。

  「では、プログラム順に発表します。一番、静岡市立△□中学校、銅賞。」
銅賞の時は温かい拍手が送られる。
「二番、矢伊豆市立豊田中学校、銀賞。」
銀賞の時はそこに歓声が混じる。
五番まで金賞は出なかった。
「六番、静岡市立城内中学校、金賞!」
城内は大歓声に包まれる。
「七番、清水市立袖師中学校、金賞!」
悲鳴に似た歓声が上がる。
そしてついに僕たちの番だ。
「八番、清水市立富士見ヶ丘中学校、金賞!」
僕たちは思わず歓声を上げた!やった!第一関門通過だ!隣の絵里ちゃんとも握手だ。
壇上の先輩達も笑ってる。
後、十番目の島田西中が金賞で、金賞が四つ出た。
ということは、この中から三校が県大会に行ける、と言うことだ。

場内のざわざわが完全に落ち着かない中、アナウンスが流れる。
「それでは、今月十七日に、この駿府会館で行われる県大会への出場校を大会役員、集計係の望月吉成が発表いたします。」
ざわざわが収まる。
「それでは発表いたします。プログラム順に発表します。清水市立、袖師中学校!」
大歓声が場内を包む、と同時に、僕らも一瞬戸惑う。
城内中が飛ばされた。ということは、僕たちが・・・・・そう思った瞬間、
「清水市立、富士見ヶ丘中学校!」
呼ばれた!歓声が上がる!壇上の海野先輩のほほを涙が流れているのがはっきりわかる。
「志摩田市立第二中学校!」
この頃にはもう場内は大騒ぎだった。
三校の代表生徒が推薦状を受け取る頃には場内も落ち着き、温かい拍手が代表校に送られた。
また、各校の代表生徒が退場する時にも、惜しみない拍手が送られたのだった。
ダメ金に終わった城内中の生徒は皆泣いていた。彼らの分もがんばらなきゃと強く思った。

会館前でのミーティングでは、先生が保護者、OBに感謝の言葉を伝えた。
僕らも大きな声で「ありがとうございました!」を送ったんだ。

バスに乗り込み、学校に戻る。
バスの中では気が付くと自由曲の合唱となっていた。
みんなが自分のパートを歌うのだ。
完璧とはいわないけれど、結構それらしく歌えていて盛り上がった。
淳の口パーカッションがウケた。

学校に到着。
トラックで運んできた楽器を準備室に運搬、片付けるところから始める。
手持ちの楽器も片付け終わり、音楽室に集合した。

ミーティングが始まった。
杉山部長を始め、カルテットからの言葉があり、一年生からの感想があった。
二年代表でスズケンが指名されたが、途中で泣き出しやがった。
自信はあったとはいえ、やはり奴のしょっていたプレッッシャーは並じゃなかったんだと思う。

最後に先生から話があった。
「よくやった。僕は君らを誇りに思う。演奏をしたメンバーだけじゃなく、一年生の鑑賞態度、
移動の時のマナーなども大変良かったと聞いた。楽器運搬の時も三年生が率先して動いていたな。
それを見ている二年、一年が負けじとがんばっていた。全員がとても素敵な集団に育っているのがすごく嬉しい。」
先生はそこで一度言葉を切って天井を仰いだ。
その間で先生が泣いてるように感じたんだけど、顔を戻した先生は満面の笑顔だった。
気のせいだったかな?
「さて、県大会までにやんなきゃいけないことは実はたくさんある。でも今君らに一番必要なのは、休息だ。
明日からの三日間、しっかりと休んで、頭を真っ白にしてきて欲しい。県大会では新しい富士見中サウンドを
お客さんに聞いてもらうつもりだ。いったん今までの事を忘れて、作り直すんだ。いいね、頭を真っ白にしてくるんだぞ。
ああ、宿題も溜まってるかな?」
みんなが笑った。
OBの先輩が後で言ってくれたんだけど、なんと、島田西中と同点で一位通過だったらしい。びっくりだった。

ミーティングが終了して昇降口を出ると、もう暗くなっていた。時計を見ると六時半を回っていた。
「ああ、でも本当に楽しかったなあ。」
絵里ちゃんがつぶやいた。
「そうだね。でも僕、最初の音を出したとき、先生に言われた通りの感じになっちゃってさ、焦ったよ。」
「私も私もー。最初の音を出したとき、自分の音しか聞こえないような気がして、びっくりしちゃったけど、
いつも通りいつも通りって吹いてたらいつの間にかみんなの音が聞こえてきただよね。」
そうか、絵里ちゃんも同じだったのか。
「県大会ではきっと初めっからみんなの音が聞こえるよ。同じステージでふけるのはありがたいよね。」
そうだ。県大会も駿府会館で行われるからそういう意味では僕らにとってはありがたいことだった。
「今日、何時ごろ電話くれる?」
「そうだなあ、晩御飯が終わって・・・・・八時半ごろかな?」
「うん、わかった。じゃあね、バイバイ!」
「バイバイ!」

かなり遅くなっていたので、恒例の校門ミーティングは無しで帰ったんだ。

家に帰ると、既に帰宅していた父が笑顔で迎えてくれた。
「おかえり。やったな!約束どおり、県大会には応援に行かなきゃな!」
「ありがとう。期待してくれていいよ。僕らはちょっと調子に乗っちゃってるからね。」
「ほう、これはこれは力強いコメントだ。楽しみだな。」
母も晩御飯にはかなり気合を入れてくれていた。
僕の大好物の煮込みハンバーグに加えて、誰かの誕生日会か?と思えるようなにぎやかな食卓となっていた。
双子たちはそんな食卓を思う存分楽しんでいた。母は相変わらず淳のことやスズケンの事を褒めまくっている。
「杉山君だっけ?部長さん。彼もかっこいいわねえ。あんたの部活、イケメンが多いわ。県大会も楽しみね!」
お願いだから音楽を聞きに来て下さい、母さん。
父が笑った。
八時半を過ぎた頃、絵里ちゃんに電話した。
学校では話しきれなかった今日一日の色々を語りまくったのさ。
ふと気付くと母が睨んでいる。いけない、もう話し始めて四十五分経っている。
「じゃあまたね、母さんが睨んでる。ついつい長話になっちゃった。ごめんごめん。」
「あたしも調子に乗っちゃったっけ。気ー付けないとね。じゃあね。」

明日から三日間、何して過ごそうかな。

頭の中を真っ白にしないとね。

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