Many Ways of Our Lives

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おだっくいLOVE

第一章 出会い

【三】部活決め

「君は何部にしたんだい?」
淳が聞いてきた。
先週から、部活の仮入部が始まっていた。
中学校に入り、僕らを待っていたものの一つが部活動だった。
運動系、文科系色々ある中から一つ選ぶ為に、
この仮入部期間でいつくかの部にお試し入部ができるのである。
毎日真新しい体操着に身を包んだ1年生がグラウンドを走り回り、
文化部の部室前にも入部希望の1年生が群れを成していた。
高橋幸利は当然のように陸上部に入るらしい。
絵里ちゃん情報は今のところなし。
淳お気に入りの望月麻美はバスケットボール部だそうだ。
僕には先輩もいないし、友人もまだ数えるほどしかいなかったりもするので、
口コミ情報がない。なので、人気のサッカー、野球、テニスに仮入部してみた。
特に理由はなかったが、テニスにしようと思っていた。

「テニスにしようと思ってる。淳は?」
「うむ。俺はブラスバンドに入る。」
「へえ、コレは意外だなあ。運動系だとばかり思ってた。」
「俺は実は先祖がミュージシャンでね。」
「何を言ってるのさ。楽器は何を?」
「打楽器。将来はドラマーだな。見ていなさい。そっちこそテニスとは意外だ。
トランペット持ってるとか言ってなかったか?」
確かに僕は小学校の頃、トランペット鼓隊に所属し、トロンボーンを吹いていた。
祖母にそのことを伝えたところ、「トランペット鼓隊」という名前だけを聞いて
誕生日にプレゼントしてくれたのがトランペットだった。それはそれで楽しかったからいいけどね。
「まじめにスポーツをやってみたくてね。ってゆーか、テニス部の先輩ってかっこいいじゃん。
自分もあんなふうになれないかな、ってのがホントのところ。」
「ま、そんなところだな。でもな、俺は予言する。最終的に君はブラスバンドに入ると思うぞ。」
「は?なんでさ。根拠は?」
「ふっふっふっふっ。」
淳は謎の笑みを残して立ち去った。
ほんと、面白いけど時々ワケの分からないことを言う奴だよな、あいつは。

でも結局、淳の予言は当たったんだ。

「ほらみろほーらみろ、俺の言うとおりだったろう。テニス部なんて走るばっかりで、
楽しいことなんかいっこもなかったはずだ。すぐに嫌になってやめると思ってたのさ。」
得意げに解説する淳だった。
でも、ホントにテニス部はひたすら走るばっかりで、楽しくもなんともなかったなあ。
「へへ、ホント言うとな、テニス部は毎年入部希望者がものすごい数になるので、
仮入の時にとにかくひたすら走らせて、嫌にさせっちゃうんだって。
それで部員を絞り込めば、人数も減るし、根性のある奴だけが残るしで一石二鳥だ
って顧問が言ってたって部長さんが言ってたよ。ちなみに部長、幸利の兄貴。」
そういうわけだったのか。くそう、やられた。僕はただの根性無しかい!
「いーや。そういう問題じゃないって。君もやっぱり先祖がミュージシャンなのだよ。
おとなしくブラスバンドに入るがよい。それにな・・・」
また意味ありげに笑う。
「栗崎も入部したぞ。」
はうっ。
初めからそう言ってくれれば、なーんにも考えずにブラスバンドに入りましたよ、僕は。
「イヤイヤ、彼女も実は運動部に仮入してたらしい。
なんだか知らんが今週になって急に路線変更したと聞いたぞ。」
そうだったのか。いや、なんでもいい。僕はブラスバンドに入る。

淳に引っ張られて音楽室へ向かった。部長さんはきれいな三年生のお姉さまだった。
「お名前は?」
「山下亮介です。」
「希望の楽器とかあるの?」
「小学校でトロンボーンを吹いてました。」
「そう、ならちょうどいいわ、トロンボーンの希望者がいなくてねえ。
あなた、とりあえずやってみない?」
きれいなお姉さまの言うことは基本、聞くことにしているので、
「はい、がんばります!」
と元気に答えたのだった。

1年生は18人入った。最終的に顧問の先生に決めてもらったパートは、次のとおり。
絵里ちゃんはクラリネット。
僕はトロンボーンで、淳が打楽器。
トランペットにオモシロそうなやつを発見。鈴木健二、略してスズケンだそうだ。
フルートの大竹美穂はリスみたいな感じ。
背の高い篠宮良子がバリトンサックスに決まった。
うーん、サックスのほうがかっこよかったかなあ。
全体に1年生メンバーをぐるりとみまわしてみると、ナカナカ楽しそうなメンバーであった。
なにしろほれ、絵里ちゃんがいるんだから。楽しくないわけがない。

先輩達も結構個性的で楽しそうだった。
それにしても3年生って大人っぽいなあ。男子の先輩なんて、人によってはおやじっぽくさえ見えた。
ホント、インパクト強かった。
自分達もいつかはあんなふうに見えるようになるのかなあ、とか思ったりしてね。

とにかくこれから、よろしくお願いします。


【四】中間テスト

中学校に入って戸惑ったのが、定期試験ってやつだった。

小学校の時は単元が終わるたびにその都度テストがあった。
が、中学校では中間テストや期末テストでそれまでにやった授業の内容をまとめてテストするのだそうだ。
そういうのは僕の主義じゃないだなんて、言っててもしょうがないね。

中間テストまで2週間を残した土曜日の4時間目の学活で
中間テストまでの学習計画表を作るように言われた。
まいったね。
勉強なんて授業以外でやるもんじゃないと思ってたし、
「家庭学習」なんて言葉もここで初めて聞いた。(気がする)
ま、勉強が嫌いなわけじゃないから、とりあえずはやってみましょう、って感じかな。
(ちょっと生意気な感じの僕) その日の夜、机に向かって勉強を始めた。
母が部屋に入ってくるなり、いきなりドアをバタンと閉めて居間に駆けていった。
「パパ、パパ!大変!亮介が勉強してる!」
母の大きな声が部屋まで響いてきた。
母よ、そのリアクションは面白いけどいただけないぞ。
しかもその後父の笑い声が響いてきたのもちょっと腹立たしいぞ。
無視無視。勉強勉強。

その日から一応自分で立てた予定表どおりに勉強を進めた。
授業で教わったことを改めて別のノートにまとめるのが徐々に楽しくなってきた。
まだまだやっていることが基本的なことだったからだと思うが、
「僕、勉強好きかも。」くらいは思うようになったんだ。
当時、「蛍光ペン」がはやり始めていて、ノートがピンクやオレンジや黄緑の蛍光ペンで色分けされると、
それだけで勉強したような気になったものだった。
綺麗にノートが整理されていると、直前に読み返すだけで結構テストには使えたね。

この頃からだんだんと就寝時間が遅くなり、ラジオの深夜番組にハマっていった。
横浜時代お気に入りだったニッポン放送の感度が悪く、どうしよう、と思っていたら、
静岡にも地元の放送局(SBS静岡放送)があり、オールナイトニッポンとかを聞けるのだと淳が教えてくれた。
映画「エク○シスト」のテーマが流れた時は怖かった。(曲自体は大好きだけどね。)
○井由実の曲にうっとりした。
○SPとか今でも覚えている。(納豆空豆ピーナッツとか言ってたなあ。ホントは○ュー・サディスティック・ピンクの頭文字だよね)
あの○のねにも夢中だった。
糸井○郎さんも現役だった。
時報の音がニッポン放送とは違ったりして面白かった。
(僕はあのニッポン放送の「ピポ・ピポ・ピポ・ポーン」というやつよりも
SBSのアルペジオチックなやつの方が好きだったな。)

そんなこんなであっという間に中間テストがやってきた。

2日間にわたりテストだけなんて小学校ではありえなかったので、妙にウキウキしたりしてね。
自分では勉強したつもりになっていたので、結構楽しく試験を受けたんだ。
テストが終わるたび、みんな「あそこの答えはどうだった?」とかやってるけど、
僕とか淳とかは、そんな会話には加わらず、次の教科のノートを見返したりしていた。
絵里ちゃんは?とみると、友達を捕まえてまるでテストとは関係ない話題で盛り上がっていた。
中には微妙に迷惑そうな顔の友達もいるようだったけどね。

全ての教科が終わり、みんなは久しぶりの部活へと散ってゆく。
淳と僕と絵里ちゃんも部活へ向かう。

「山下君、淳ちゃん、テストどうだっけー?」
絵里ちゃんがいきなり聞いてきたのでちょっと驚く。
「どうしてって?テスト終わっただもんで聞いてるだけん、おかしい?」
「いや、絵里ちゃんとかって、テストとかあんまり興味無いのかと思ってたし。」
「えー、なんでー?」
「テスト中もいつもの雰囲気で盛り上がってたっけじゃん。」
村中も加わる。
「そうそう、檜山が微妙な表情で加わってたっけな。あたしは勉強したいのにーみたいな。」
余計なことを言うな。淳。
「えー、だったらちゃんとそう言えばええじゃんねー。そっかー、
テスト中はあたしも気を使ったほうがええだかねー。」
そうだけど、絵里ちゃんなら許す。話を進めた。
「思ったほどは難しくなかったね。そこそこできたかな。」
「やはりな。そのくらいのことは亮介君なら言うと思っていたワイ。」
淳が茶化した。
「そうだよねー。中間テストとか言うからどんなに難しいかと思ったら、
授業の中身がそのまんまだっけもんねー。」
絵里ちゃんすごい。授業の中身を全部覚えてるってか?
「そんなことないけーが、覚えのない問題はなかったっけやー。」
こりゃ結果が楽しみだ。

久しぶりの部活では、1年生はみんななかなか音がきれいに出なかった。
もちろん僕も例外じゃなくね。
週が明けて続々とテストが帰ってきた。
僕らの中学校では定期テストはどの教科も50点満点。
中間テストは5教科なので、250点満点となる。
僕は社会で少しドジって合計が215点。ま、そこそこいい線かな。
淳はどうも理科が苦手らしく、合計で208点。コレだって結構いい線だ。

この学校では学年の成績上位者一覧を廊下に張り出すんだ。

帰りの会でテストの記録表が渡されて、自分はクラスで2位。学年では16位だった。
へえ、結構いけてるじゃん。淳はクラスで4位。学年で25位だった。
あんまり勉強してなかったといってたので、ま、これもその割にはいい線だったんじゃないかな。

あれ?じゃあクラスの1位って誰だ?

帰りの会が終わって、廊下に張り出された表を見て驚いた。
絵里ちゃん、合計が228点
学年で6位。
当然クラスで1位。
僕も淳もクラスの皆もびっくりだった。
あっ・たま・いいー。
ちなみに望月麻美が212点でクラスの3位、学年で19位。

僕と淳は顔を見合わせた。これはちょっとまずいんじゃないか。
何がって?。
好きな子が自分より頭がいいのはちょっと格好悪いので何とかしなきゃと、そう思ったわけ。
淳と目を合わせて頷く。このままでは済まさんぞ!

「山下君、淳ちゃん!部活に行こう!」
いきなり絵里ちゃんに声をかけられ、
「は、はい。」と情けない声で答えた2人であった。
ま、人間、テストの結果だけではないぞ。卑屈になるな、若者よ。
部活が終わる頃にはショックも収まり、いつもの3人に戻っていたけどね。

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