その日は来ていた
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出発
翌日早朝、山形親子が正明を迎えに来た。
「じゃあ母さん、俺、行って来るよ。」
正明は母の目を見つめて力強く言った。母は黙って頷いた。
純一が正明の荷物を父のランドクルーザーの後部に積み込んだ。
正一郎が正明の母、由美子に声をかける。
「では由美子さん、正明君をしばらくお預かりします。留守をお願いしますぞ。うちの奴がお邪魔をするかもしれませんが、そのときは相手をしてやってください。」
「お気遣い有難うございます。沙紀さんなら大歓迎ですわ。わたしのほうからお邪魔しちゃいそう。」
「いやいや、ぜひそうしてやってください。では、吉報をお待ちください。」
「よろしくお願いします。正明、気をつけるのよ。」
「わかった。じゃあね。」
三人は彰一郎の車に乗り込んだ。
「学校にはうちの奴と由美子さんから連絡を入れてもらうことになっている。家の都合でしばらく休むことになるとね。二人いっぺんにそういうことになるとは普通は思えないから、あれこれ考える奴もいるだろうが、ま、それもしばらくの間だろう。こちらもそう長い時間を使うわけには行かない。なにしろ君の悪夢が現実になるのがいつなのか分からないからね。」
正明は反論した。
「いや、おじさん、それは違うよ。僕の夢が本当なら、そこには自分自身もいるし、正明もいる。だから、僕らが戻るまでは“それ”はおきないはずなんだ。」
「うむ、そうかもしれん。しかし君の“記憶”が間違っているのかもしれん。だから急ぐに越したことはないんだよ。」
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