Many Ways of Our Lives

文化祭

俺、歌にはちょっとだけ自信があったんだ。
特にこの歌、結城英明の「モーニング・サンシャイン」は大好きで、自分でいうのもなんだけど、
結構歌えてると思ってた。
だから、文化祭のイベントで、「勝手にステージ」の参加者募集があったとき、思い切って応募したんだ。
音楽室でオーディションがあったんだけど、審査員の評判もよくて、参加許可をもらえた。
中学校のときに小遣いをはたいて買ったギターを抱え、毎日一生懸命練習したのさ。

ある日、放課後の教室で一人で練習していたら、後ろのドアから誰か入ってくる気配がした。
振り返ってみると、テニス部の小島だった。
「智章、結構やるじゃん。何の練習なん?」
「文化祭のさ、勝手にステージの。」
「えっ?何、オーディションに受かったの?すげえじゃん。いいなあ、おれ、申し込むの忘れてたんだよね。そうだっ!」
「な、なんだよ。」
「俺もまぜてくれ!」
「はあ?」
「だから、二人組みで出んの。」
「冗談。」
「冗談じゃなくて。だいじょぶだいじょぶ、実行委員長は村田だろ?俺の頼みなら聞いてくれるさ。」
なんてこった。こいつは普段から何かと無遠慮なやつだから距離をおいていたのに、よりによってこんな場面で俺に絡んでくるとは。
ここはよーく考えろ、俺。

しょうがない・・・
断固として断る