文化祭〜その1
考えた末に、ここは寛大な俺になることにしたんだ。
「わかった。いいよ。コンビ結成だ。委員長にはお前がちゃんとお願いしといてくれよ。」
「さすが、智章だ!話がわかる!じゃ、練習しようぜ、練習!」
こうなったらしょうがない、せっかく二人でやるんだから、ハモリとか決めて目立つしかないな、と思ったんだけど。
「ハモリ?俺は無理だぜ。メロディしか覚えらんねーし。」ときやがった。
しょうがないから小島にはメロディを歌わせるしかない。サビで俺がハモってやるしかないな。そのことを伝えると、
「じゃあ俺、練習とかしなくってもいいよな。メロディはわかってるし、歌詞も覚えてるしね。じゃ、智章、頼むぜ!」
そういい残して帰っちまいやがったんだ。本当に自分勝手で傍若無人なやつだ。しょうがないからCDを相手に一人でハモリの練習をした。
放課後練習をしていると、水田真里が声をかけてきた。中学校から一緒で、部活も同じなので、普通に仲が良い。誰にも言ってないし、本人になんか当然伝えてやしないけど、俺の片思いの相手だ。
「勝手にオンステージに出るんだって?智君ならきっとウケると思うよ。歌、上手だから。がんばってね!」
ごく普通ににこっと笑って、
「うん、がんばるよ!」と返す俺。心の中では(うわー!真里ちゃんが応援してくれた〜〜〜!!!がんばるしかね〜〜〜!児島を捕まえろ〜〜〜!!!)って感じだった。
でもその後もなんだかんだ理由をつけて練習に参加しない小島だった。文化祭の3日前に俺はようやく小島を捕まえた。
「小島!いくらなんでも何回かあわせとかなきゃうまくいかないだろう!」
「わかったわかった。心配すんなよ。今日の放課後残るからさ。」
来やしねえ。
とうとう文化祭本番が来てしまった。結局練習らしい練習もせずに当日を迎えることとなったんだ。あと2組で出番だ、というところでやっと現れやがった。わびの一言もなし。
そして本番。俺のギターが前奏を奏でる。1メロが始まる。えっ・・・・
うまい・・・
小島のやつ、めっちゃいい声をしてる。しかも、うまい。俺は思わず小島を振り返る。真剣な目で歌ってやがる。
サビに入る。小島の意外な歌声に戸惑う俺は、見事に音をはずした。
2回目以降のハモリは何とか気を取り直してきちんとできた。
何とか終了。ものすごい拍手のなか、俺たち二人はステージを降りた。
みんなの目線は当然のように小島に集中していた。真里ちゃんがいた。ああ・・・小島を見ている。
「小島、やるじゃん。いい声してんなあ」etc...小島への賞賛の嵐だ。おまけのように俺にも時折声がかかる。
「ちょっとミスったみたいだけど、ハモリも良かったじゃん。」
真里ちゃんにいたっては、
「智君、ドンマイ!」だって。
こんなはずじゃなかった。あくまでも主役は俺のはずだった。うまくいったら真里ちゃんに告ろうくらい思ってたのに。(いや、これは今作った。)なんか、悔しかったんだ・・・
それにしても、小島って・・・
その日以降、小島の人気が急上昇したのは言うまでもない。俺?今までどおり。可もなく不可もなく。あの時小島の言うことを聞いたりしてなけりゃ・・・
しょうがない、また明日から普通の高校生として普通にやってくしかないな、とあきらめ気味に思ったんだ。真里ちゃん?相変わらず可愛いよ。気持ち?伝えてないよ。だって・・・
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