Many Ways of Our Lives

人は誰でも心の中に他人には知られたくない(知られてはいけない?)秘密を抱えているものだ。それは時々、罪の記憶だったりもする。
彼、吉本武雄も、そんな罪の記憶を封印して生きている一人だった。

吉本武雄、42歳。
彼はあるIT企業に勤める平凡なサラリーマンだった。共働きの妻はやはりあるIT企業のサポートデスクに勤めている。
2人の子供がいて、娘が中学3年、息子は小学校5年生だ。
ダブルインカムということで、家も持ち家、住宅ローンの返済も余裕だったし、
子供たちもこのご時世ではありがたいことに素直に育っている。
妻は同い年だが、出会った頃のまま、可愛らしく、優しい女性だった。

その日、吉本武雄はいつものように定時に仕事を終え、六本木の駅に向かって歩いていた。寒い夜である。
一刻も早く日比谷線に乗り、東横線の日吉にある自宅に帰り、暖かい食卓を家族と囲みたかった。
六本木交差点に差し掛かったとき、声をかけられた。
「吉本先生?吉本先生でしょ?」
吉本先生?こんなところでそんな呼ばれ方をするとは思わなかったな、と訝りながら振り返ると、
そこに二十代半ばと思われる女性が立っていた。
今風できれいな女性だ。
「あのう、どちら様でしょうか。」
自分に声をかけてくる若いきれいな女性がこの世に存在するとはとても思えなかったので、彼はそう尋ねた。
「何を言ってるんですか。私です。斎藤麻穂。忘れたわけじゃないでしょうね。」
あっ!と吉本は心の中で叫んだ。斎藤麻穂・・・この名前を彼が忘れるわけがなかった。
「麻穂・・・ちゃん・・・か・・・。」
そう言うのがやっとだった。その瞬間、時間が止まったように感じた。すべてを封印したはずなのに。
今まですっかり忘れたと思っていたのに。
自分の秘密が、いやむしろ自分の「罪」そのものが、今目の前に立っている。
彼はどうしたらいいのかわからず、立ち尽くすしかなかった。
時間を動かしたのは彼女のほうであった。
「少し時間とれませんか?久しぶりに会ったんだし。お茶くらいいいでしょ?」
「あ、ああ、いいよ。それくらいなら・・・」
彼女の言うがままに、吉本は近くの喫茶店に彼女と二人で入ったのだった。

はじめに口を開いたのは麻穂だった。
「驚きました、本当に。まさか先生と六本木なんかでお会いするなんて。」
彼女はそういうと微笑んだ。あの頃も可愛かったが、今ここにいるのは堂々とした大人の美しい女性だった。
まぶしそうに彼女を見つめる彼をそのままに、彼女は楽しそうにしゃべりつづけた。
封印していた記憶が堰を切ったように彼の脳裏に溢れ出した。
そう、あれは10年前。彼がIT企業に勤めるようになる前の、塾の講師をしていた頃のことであった・・・・

「吉本先生、ここなんですけど・・・」
斎藤麻穂がノートを持って彼のもとに来た。いつもの光景だった。
彼は少し首を傾けて右の眉を微妙に上げて彼女の質問を受け止める。
20:50。授業が終わると決まって麻穂が質問に来る。
たいていはその日の授業の内容の単純な確認だったので、吉本は(熱心で丁寧な学習態度だな。)と、いつも丁寧に答えてあげていた。
5分くらいのやり取りのあと、
「さ、下校指導の先生も待っているから、急ぎなさい。」と帰るように促してさようならをするのが日課のようになっていた。

「斎藤麻穂か。熱心で可愛い子じゃないか。」と同僚の山梨洋二が声をかけてきた。
「そうだな。言われてみれば可愛い子だ。」と吉本が応える。
「しかも、中二にしては大人っぽいしね。」と、これはまた同僚の設楽順子だ。順子が続けた。
「気をつけなさいよ、吉本君。あの子、あなたの事狙ってるわよ。」
吉本は笑って応える。
「何言ってるの。中二の女の子相手に何を感じろって言うの。」
3人は顔を合わせて笑った。
「そりゃそうだ。それに、こいつにはもう5年も付き合っている彼女もいるしな。」と山梨。
「そうそう、本当に結婚する気があるのかしら、この二人は、って感じよね。
朝美さんだっていつまでも待っていられるとは限らないわよ。」順子が続ける。
「大丈夫、ちゃんと考えているから。」吉本がまとめた。

本当は何も考えていなかった。
大学を卒業してこの仕事について5年経ったところで朝美と出会い、それ以来5年間付き合いが続いている。
朝美はあるIT企業でSEとして働いていて、拘束時間も長く、不規則だったため、吉本と会えるのは月に2、3回だった。
かえってそれがよかったのだ、と吉本は思っていた。
会うたびにお互い新鮮な気持ちになれたし、分かれるときにはまた会いたい、という気持ちになるからだった。
ただ、お互いに30を越えてしまっていることもあり、順子に指摘されたようなことをそれとなく朝美からも感じていた。
「そろそろけじめをつけないとな。」とかれはひとりごちた。

吉本の休日は日曜日と水曜日だった。今日はそのうちの日曜日で、夕べも遅かったので8:00にはまだ彼は熟睡していた。
彼の友人もそのことを知っているので、めったにこんな時間に電話がかかってくることはない。
しかし今日は違った。昔の電話のベルのような音が彼の携帯から鳴り響き、驚いて彼は目を覚ました。

(誰だよ、こんな早くにぃ。)ぶつぶつ言いながら彼は携帯をまさぐり、手にとると、不機嫌に答えた。
「もしもし、吉本ですが。」
「あのう・・・吉本先生ですか?」
聞き覚えのある可愛らしい女の子の声だった。
「そうですけど、どなた?」
「斎藤です・・・。斎藤麻穂です・・・」
さいとう?だれだっけ・・・さいとう、まほ・・・あっ!
「おう、斎藤さんか、塾生の斎藤麻穂さんだね。」
「はい、そうです。お電話、ご迷惑でしたか?」
「いや、別に迷惑だなんて・・・それより・・・」この電話番号、どうやって知ったんだ、この子は。
「ご相談したいことがあって、今日お時間とっていただけませんか?」
なんだろう、勉強のことなら日曜日にまで熱心なことだ。そしてたまたま今日は何の予定もなかった。ま、いいか。
「いいけど、どうしたらいい?塾に来るかい?」
「それじゃ先生に悪いから、私が先生のところに行きます。」
「私のところって、君のところからはちょっと遠いだろう。それに私の部屋は汚いからだめだよ。
そうだな、新百合ヶ丘まで出てこられるかい?」
「はいっ!わかりました。何時に行けばいいですか?」麻穂はうれしそうに聞いた。
「そうだなあ、11:00に改札で。それでいい?ところで何の相談なの?内容によっては準備していくよ。」
「いいえ、お会いしたときに話します。じゃあ11時に!」
言葉を重ねる間もなくさっさと電話を切られてしまった。

よく考えるとおかしな話だった。いつも塾で会っている相手に休みの日に何の相談があるというのか。
それに、自分の携帯番号は生徒には公開していないはずなのに、どうやって彼女はそれを知ったのか。
普通なら「塾でね。」の一言で終わらせてしまうところである。
(俺は何で会う約束をしたんだろう。)自分でもおかしいなと思う答えを返した、その理由が知りたくて、彼は急いで出かける支度をした。

10:50に吉本は小田急線の新百合ヶ丘についた。改札を出ると、向かい側のコンビニのドアの脇に斎藤麻穂が立っていた。
順子が言っていたが、中二の割に大人びた雰囲気をもっていた。
いつもとは違う雑踏の中で彼女を良く見ると、いつも以上に可愛らしく見えた。
吉本に気づいた麻穂がにっこり笑って彼のほうに走ってくる。
「すみません、わざわざ出てきていただいたりして。」
他の子に比べ、彼女は言葉遣いも丁寧で好感が持てた。それにしてもこの子って、こんなに可愛かったっけ・・・
いやいや、何を考えているんだ俺。頭を振っておかしな思いを断ち切り、吉本は麻穂に話し掛けた。
「じゃ、お茶でも飲みながら話を聞こうか。」
すぐそこにあるミスタードーナツの2階が確か禁煙席だったはずだ。麻穂が吉本の後に続く形で二人は店に入った。

ミスタードーナツに入ると、吉本は小さなドーナツがアソートしてあるものと、飲み物を頼んだ。
品物を受け取ると2階に上がる。禁煙席を選ぶと、向かい合って座った。
「さてと、相談って、なんだい?」
吉本はストレートに聞いた。
「・・・・・」
麻穂は下を向いてしまって何も言わない。どうしたんだろう、なんなんだ?吉本は戸惑った。
「相談があるというから会いに来たんだよ。ちゃんと聞くから、言ってごらん。」
別に気を悪くするようなことでもなかったので、吉本は優しくそういった。すると、麻穂は顔を上げて話し始めた。
「ちゃんと聞いてくれますね。」
「ああ、ちゃんと聞くとも。言ってごらん。」
すると、麻穂は、吉本の目をまっすぐに見つめて言った。
「私、先生が好きです。」

漫画だったらコーヒーを吹き出すところだった。(心の中では確かに「ぶっ」と吹き出していた。)
な、な、何だって!?今この子はなんて言った?思わず吉本は周りを見回した。
それほど客は多くなかったが、それぞれのおしゃべりに熱中していて、誰も今の麻穂のせりふを聞いてはいなかったようだ。
「斎藤さんね、今・・・ええと、僕のことが好きだって言った?」幾分声をひそめて吉本は聞きなおした。すると、麻穂ははっきりと答えた。
「はい、そうです。私、先生が好きなんです。」
いや、なんていうか、漫画じゃあるまいし、なんだこのシチュエーションは。こういうとき、年長者としてはどうしたらいいんだ?
なんて言ってやればいいんだ?戸惑いながらも、吉本は頑張って次の言葉を捜した。
「そ、そうか。いや、ありがとう。君みたいなまじめで可愛い子にそう言ってもらえるなんて、光栄だよ。」
本人は落ち着いてしゃべったつもりだったが、少し声が上ずっていたかもしれない。
「本当ですか?うれしい!本当にそう思います?」
「あ、ああ。」
「よかったぁ。拒絶されたらどうしようかって、すっごく心配だったんですぅ。よかった・・・・」
今度は涙を流し始めた。

「お、おい、大丈夫?どうしたの?」
周りの目を気にして吉本はあせって声をかけた。
「あんまりうれしくて、泣けてきちゃったんです。先生、私のことどう思いますか?」
さて、どう思っているんだろう。ここ数週間、授業後に必ずといっていいほど彼女と一緒にいたわけで、
かなり近くにいた、という感覚はある。
まじめで可愛い子だなあ、と何度も思った。でも、今彼女が俺に求めている感覚とは違う気がする。
「どうって、まじめで可愛い子だなあ、って思ってるよ。塾生としてね。」
麻穂の表情が曇った。また大粒の涙がほほを伝う。
「・・・そうですよね。あくまでもたくさんいる生徒の一人に過ぎないんですよね・・・」
そういってうつむいた彼女を見て吉本は胸が締め付けられるような思いがした。
そして自分でも思ってもいなかったような言葉が口をついて出た。
「いや、そうじゃない。塾生みんなのなかのひとり、というよりも、斎藤麻穂さん、としてだ。」
何を言ってるかわからなかった。斎藤麻穂さん、としてなんなんだ。
「好き嫌いで言えばもちろん好きだ。でも、それは好意をもっているというだけで、恋愛の対象とかそういうことじゃ・・・」
「いいんです、先生。」
麻穂が遮る。
「生徒からいきなり告白されて、いきなりOKしてくれるなんてはじめから思っていません。」
「いや、だから・・・」
「最後まで聞いて、先生。塾で私のことを特別扱いしてほしいとか、そんなことは考えていません。純粋に先生のことが好きなんです。
この気持ちを何とかして伝えたかった。それだけなんです。さっきのは取り消します。
私のことをどう思っていてもかまいません。受け止めていただいただけで・・・」

それからしばらく二人は黙ったままだった。先に口を開いたのは麻穂だった。
「ごめんなさい、先生。こんな風になっちゃうはずじゃなかったんだけど。
せっかく来ていただいたんだし、いろいろ聞かせてもらってもいいですか?」
「いいとも。何でも聞いてよ。」
そこからは麻穂の吉本へのインタビューコーナーだった。深刻な雰囲気はどこかへ行ってしまい、楽しいひと時を過ごすことができた。

気が付くと16:00をまわっていた。

「そろそろ帰らないとな、もう4時過ぎだよ。」
「ごめんなさい、つい楽しくって。先生何かご予定でもあった?」
「いや、大丈夫。じゃあ出よう。」
ミスタードーナツで4時間。吉本にとっても初めての経験だった。
「気をつけてかえりなさいね。」
「はい、さようなら。」
振り返って改札に向かおうとすると、声がかかった。
「先生!」
吉本はまた振り返った。
「また会ってくれますか?」
何の気なしに吉本は答えた。
「いいよ。」
麻穂はにっこり笑って帰っていった。

帰りの小田急線で吉本の頭の中は斎藤麻穂でいっぱいだった。
はるか昔に感じたことがある甘酸っぱいような感覚が胸を締め付けていた。これはなんだ。いったい俺はどうしたんだ。
彼は抗うことのできないその感覚に身をゆだねた。

次の日から、吉本と斉藤麻穂の間の空気が少しずつ変わっていった。

日を追うにつれて吉本の麻穂を見る目が優しくなっていった。
また、麻穂の側でも、時折言葉遣いが崩れることが見られるようになった。
「でも先生、ここはaじゃなくてbじゃないの?」
そんな時決まって麻穂ははっとした表情で吉本の顔色をうかがうのだが、
見られた吉本のほうではそのたびに胸が締め付けられるような気持ちになっていた。それは確かな変化ではあったが、
吉本は懸命にこらえていた。
(斎藤麻穂は生徒なんだ。中学2年生の女の子に30過ぎの俺なんかがこんな気持ちを持っちゃいけないんだ・・・)
ぎりぎりのところで吉本は持ちこたえた。
冬が過ぎてゆき、春が来た。斎藤麻穂も中学3年生になった。

「さて、みんなも中学3年生になったわけだ。これから受験でも本当に大切な時期を過ごすことになる。自覚を持って取り組んでほしい。」
吉本はクラスを見回した。斎藤麻穂の姿は無い。
同僚に相談し、新しいクラスわけでは吉本の教えるクラスに入らないようにしてもらったのだ。少し気が楽になった吉本だった。

何事も無く春の日々が過ぎていくようだった。斎藤麻穂も、以前のように毎日毎日吉本に質問に来ることは無くなり、
自分に対する興味も薄れてきたのかな、と、少し残念な気持ちと、ほっとした気持ちの中で吉本はこの状態をよしとしていた。
それは5月の終わり、ある日曜日のことだった。

吉本が目を覚ますと時計の針は9時をさしていた。(ちょっと寝すぎたかな。)と思いながら彼はパジャマのままテレビのスイッチを入れ、
コーヒーの準備をはじめた。
コーヒーメーカーがごぼごぼともうすぐコーヒーが入るという意思表示をはじめた頃、呼び鈴がなった。
「朝からタルいなあ。なんだっつーんだ。」
ぶつぶつ言いながら吉本は玄関に出て聞いた。
「どちら様ですかあ。」
返事が無い。
「どちら様?」もう一度聞きながら、除きレンズから外を除いてみた。
そこに立っていたのは斎藤麻穂だった。

吉本は驚いた。一瞬何がおきたかわからなかったが、すぐに気を取り直した。ドアを少しだけ開けて顔を出して斉藤麻穂に声をかけた。
「ちょっと待ってて、まだパジャマなんだ。すぐ片付けるから、そのまま、そのまま。」
慌ててドアを閉め、パジャマを普段着に着替え、布団をダッシュでたたむ。散らかったテーブルの周りを片付け、部屋を見回す。
いけない本が2、3冊転がっている。慌ててそれを押入れの中に隠す。
再度部屋を見回し、とりあえず大丈夫そうだったので、玄関のドアを開け、斎藤麻穂に声をかけた。
「どうしたんだい、麻穂ちゃん。」
ごく自然に彼女を「麻穂ちゃん」と呼び、部屋に招き入れている自分に何の疑問も持たない吉本であった。

「ごめんなさい、いきなり・・・」
麻穂がうつむき加減で謝った。
「いやいや。このままでもなんだから、っていうか、中、入るか?」
「いいんですか?」
「昨日掃除したばっかだから大丈夫だよ。」
「そういう意味で?」
「どういう意味だ?」
「なんでもないです。お邪魔しまーす。」
麻穂は吉本の部屋に入ると、うれしそうに見回した。
「へーえ。先生って、こんなお部屋に住んでるんだ。」
ベッドの下からはみ出している隠し損ねたいけない本を足で引っ込めて吉本は答えた。
「なんだよ、この部屋、おかしいかい?」
「いいえ。そうじゃなくって、想像していたのとちょっと違ってたから。」
どんな部屋を想像してたんだろう。
「ま、いいや。コーヒーなんて飲んだりするのかな?麻穂ちゃんは。」
「ええ、いただきます。」
「ミルクと砂糖は?」
「ミルクだけで。」
「なんだー。その歳でダイエットかー?」
「そんなんじゃないですよ。」
コロコロと笑った。
しばらくとりとめのない話をしていたが、ふと間が空いた。
吉本はその間がたまらず、声を出した。
「いや、でも、どうしたんだい今日は?本当にびっくりしたなあ。」
「ご迷惑でしたか?」
「迷惑とか、そんなんじゃなくて、いや、なんつーか・・・」
「やっぱり迷惑なんだ、ごめんなさい、私、帰ります。」
そう言って吉本を見上げた目は涙で潤んでいた。
その瞬間、吉本の中で何かがはじけた。
彼女のまなざしが彼の心の中でくすぶっていたものに火をつけたのだった。
吉本は帰ろうとして椅子から立ち上がった麻穂の腕を取り、優しく彼女を椅子に戻した。
自分でも何をどうしたいのかわかっていなかった。
(いや、本当は分かっていたのだ。)
目の前にいるこの子を優しく包んであげたいと思った。
(いや、本能が理性を押しのけているだけだ。)
彼女が求めているのなら、与えてあげるのが自分の務めだと思った。
(いやそうじゃない。大人ならば優しく諭してあげるのが務めだ。)
吉本の中で「教師」と「男」が激しく戦っていた。
次の瞬間、麻穂が吉本に抱きついてきたのだった。
まだ大人になりきっていないしなやかな体が自分に巻きついたときに、吉本の中の「男」が「教師」を殴り倒した。
麻穂の髪からなんともいえない良い香りがただよう。
「先生、やっぱりあたし、先生のことが好き!」
そう言うと麻穂は吉本を見上げて目を瞑った。
この子は求めている。
俺を求めている。
そして・・・俺も・・・・
吉本は麻穂を引き寄せ、そのさくらんぼのような唇に自分の唇を重ね合わせた・・・。

やびゃー!